WORKS
小器華山店
台北市、台湾
食堂、物販、ギャラリー
258m2
2023.8竣工
台湾で食堂、雑貨店を展開しているお店「小器」の華山1914文創園区に入る店舗の改装プロジェクト。
華山1914文創園区は台湾台北市中正区にある日本統治時代の酒工場の跡地を利用した、商業・文化施設で、レストランやアートギャラリー、ショップ、パフォーマンス空間が入る興味深い場所である。施設共用部には当時の面影が多く残り、それが施設のデザイン的な特徴となっている。
施主から食堂の座席数を増やすこと、雑貨店の展示棚を増やすこと、なるべくコストは抑えたいという3つの要求が与えられたこと以外にも建物自体が文化財登録を受けているため、天井吊りボルトを含め、既存躯体への新たな負荷は全てNGとされた。
以前の店舗は、開店当初から重ねてきた改装や増棚により、全体としてのデザインが失われており、他の小器の店舗のように、「白」、「木」、「ステンレス」、「黒ガラス」という4つの素材で空間構成をすることで、失われた全体としてのデザインを再構築することができると考えた。あたらしく作られる全体としてのデザインを通して、店舗空間に表面的なデザイン以外のコンセプトを与えることを目指した。また、皿をイメージした緩い曲面をカウンターやベンチシートのデザインに取り入れることで、「小器」の名前にもある器をインテリアの表現に加えることとした。
「都市(現代性)の中の遺構と遺構の中の現代性」
他の都市に残された遺構を再利用した施設同様、華山1914文創園区は周囲の現代的な都市に対して強いコントラストを生み出している。都市の中の遺構であり、廃墟感が漂う敷地内は周囲の街並みとは全く異なる空間を保っている。小器の店舗はその「都市(現代性)の中の遺構」の中にさらに「遺構の中の現代性」という反転させたコントラストをつくり、都市の中の遺構の中の店舗という空間のヒエラルキーの中に現代性の中の廃墟感の中の現代性という入れ子状の空間構造をつくり出すことで、周辺の街を含めた空間体験に意味を持たせることを目指した。
食堂、物販、ギャラリーからなる店舗スペースは、周囲の街並みを含めた入れ子状の空間コントラストにより、共用部からの2つの入口を介して、外から内への強力な引力を生みだすだろう。